株式会社オチマーケティングオフィス 


<127>百貨店EC事業の再構築


百貨店業界が沈滞ムードになりつつあります。売場でも元気も覇気も感じられません。こんな時こそ前向きに業務をこなし、施策を打ちましょう。
特に百貨店のEC事業は、これからの事業の「宝の山」であり、少ない経費で営業利益率が10%以上確保できるビジネスモデルであり、現在推進が大きく遅れている原因を解明し、対策を提言してみます。

百貨店の低迷の原因、
一つは不要な物を売らなくなったからです。言い方は変なのですが、いままでの潜在需要に対する売場・商品提案でしたが、声を上げる人に対する顕在需要の売場になった事です。
もう一つは接客をするか、商品知識を勉強している人以外は、自分で購入できないカテゴリー売場に大半がなっているからなのです。

百貨店EC事業の現状
2016年9月21日付繊研新聞のNetCommunicationの特集「ECの成長支える在庫とスマホ」を見ても、ファッション売上高のEC化率は8.1%になり、増加傾向を維持しています。
しかし、百貨店EC化率は1%前後で留まっています。その大半は目的買いの中元・歳暮を含むギフト需要であり、通常のファッション商品やリビング雑貨の売上はその1/3程度です。
専任一人当たりの売上額にしても、リアル店舗の売上よりも低い状況で、将来の事業だからと言って、いつまでこの状況に甘んじているのでしょうか?

EC事業低迷の原因
1.カテゴリー・アイテム売場
百貨店EC事業も、他の業界と同様に目的買いをメインとしたアイテム別の商品羅列しかなく、商品やカテゴリーの検索で購入される目的買いのお客様をメインしている事が挙げられます。
リアル店舗でも、百貨店は何を買うのかを決めての来店よりも、この店なら何か提案してくれるといった期待値を持っての来店者が多かったのですが、売場(リアルも、画面もカタログの誌面も)同様にアイテム展開売場になっているので、価格競争に陥って浮上できない状況です。
2.見難い・買難い画面
もう一つは見難い、買い難い画面設計にも問題があります。モデル着用でも、身長170cmもある背の高いプロのモデルが着用しての膝丈のワンピースなら、160cmの私なら膝より下になるのでは?」と言ったサポート説明もないサイトも多く、またWEBやショップの新規会員になれば1000ポイント付与する等はあっても、単品商品毎のポイント額が見えない等の表示画面にも課題があります。
3.販売管理費
販売管理費等の経費が多額であり、過日の電通の過剰請求などは氷山の一角ではないでしょうか?本当に妥当な経費なのか、売上に対する妥当な投資なのかを見極める軸があるのでしょうか?はなはだ疑問です。
4.EC事業の成長阻止要因
各百貨店のサイトを立ち上げた技術型の責任者は、儲かっていない事に対するいままでの自分の判断を自己否定しなければならず、技術型のTOPがいるウェブ事業部長等は今までと異なるサービスの導入に難色を示しているのです。
最近は営業経験値のあるTOPに変わりつつあり、儲かるか否かの軸での見直しが実施されつつあります。営業経験があっても、儲かるか否かの判断が出来ない人もいますが、、

EC事業の目的
欧米では小売事業のEC化率は30%まで届くとの予測で、いつまでに、誰が、何を、どのようにとのVISIONを持って、サイトブランディングに取り組み、リアル店舗の売上の低下分を補填するのみでなく、新たな需要開拓にまで目が向いています。
勿論、日本全体の小売消費額がその分増える訳ではないのですが、他社のパイを獲得する事と潜在需要の掘り起こしを目的に事業を推進していくべきです。
最終は企業の利益確保が目的であり、リアルとサイトの売上で、1+1=1では意味がないのです。最低1+1=1.3になるべきなのです。

今後の対策
1.テイスト軸の売場構築(目的買いからの脱却)
店もテイスト軸では分割できていなく、お客様の「お気に入り」になっていないのです。当然オンラインサイトも同様であり、この店やサイトを見れば、自らの気に入ったテイスト軸の商品が並んでおり、目を閉じて購入したら、おかしなファッションになってしまう売場構築になのです。
2.見易い・買い易い画面設定
EC担当者を含め会社の幹部や社員は自社サイトや自社商品を知っているスタンスで画面を見ているのですが、一般のお客様は何も知らない位置からサイトに入って来られるのです。
よって、知識がない状況で自社サイトを見ると、何が欠けているのかが判明するのです。
要は、財布を握って画面を見ていないのです、リアル店舗同様に自分のお金で、「この環境・売場で、この接客・サービスで、この商品を買うのか?」を自問自答すれば一目瞭然です。
3.適正な販売管理費の使用
EC業界では、宣伝・広告費が多額に使用されていますが、本当に効果があるのでしょうか?効果計測などしていない場合が多く、また、上記の過剰請求など余程の確認でもしない限り浮彫にはなっていません。どこかのITサービス企業が、ブラックボックスにはしないとのコメントを出す位、業界では当然のごとく扱われています。小職が実践しているような、投資に対する効果計測が本当にできないのでしょうか?
4.コンバージョンレイト(CVR)の向上施策-1
通常のサイトのCVRは2~3%程度ですが、百貨店のオンラインサイトは1%程度しかなく、100人サイトを閲覧された人の内、1人しか購入されていないのであり、99人はサイトから購入されずに離脱されているのです、
よって、サイト導入者を2倍にすれば売上も2倍になるとの理論で、サイト導入のために経費を使用しているのですが、その経費と増加した売上による営業利益との見合いが取れているのでしょうか?
5.コンバージョンレイト(CVR)の向上施策-2
例えば、大手百貨店のサイト閲覧者は通常月50万人以上いらっしゃるのですから、逆にサイト導入者を増加しなくても、閲覧者の離脱を阻止するサービスを利用すべきででしょう。
閲覧者の行動を分析し、その行動に応じた声掛けでCVRを向上させるのです。
経費も声掛けで売れた売上のみに対しての歩合であり、出来高なので売れていない声掛けには支払いが発生しないのです。これで毎年売上が20%以上増加しているのです。
6.投資効果の計測できるサービス
上記サービスは、1年位サイト導入のウェブ広告はそのままにしておけば、ウェブ広告により入って来て購入された売上が見えるので、ウェブ広告の効果計測にも役に立つのです。
導入された企業はウェブ広告の効果が見えてくるので、効果のないウェブ広告をほとんど中止され、このサービス中心に経費削減されつつあります。

宣伝・広告費についての考え方
サイト離脱率防止サービスは小職からのご紹介も可能であり、アパレルや通販会社は取り上げつつあり、大きな効果を出しています。
小職は現場中心の改革・改善により、営業利益率の向上を目指したコンサルティング・サービスであり、経費に対する考え方は、「宣伝・広告費は経費であり、小さい投資で如何に大きな効果を上げるか」を軸にしています。

サイト・オリジナル商品開発
リアル店舗と在庫共有化も一つの手法ですが、リアルはリアルでの売上、利益の改善を求め、サイトはサイト用の在庫を確保し、自らのリスクでの売上、利益確保に向かうべきです。
よって、サイト・オリジナル商品の開発も当然必要です。リアルとサイトが同じものであるのなら、両方足して既存売上程度で、企業の拡大施策にはならないのです。
そのために、サイト売上を店に付けたりしないで、1店舗としての扱いで、自らの事業での売上、利益拡大に向かうべきでしょう。

百貨店EC事業のビジョン
現在の百貨店EC事業は、ビジョンを明確に設定できないで、目先の枝葉末節の手法論に惑わされています。本来の百貨店EC事業の将来像を仮説でも設定し、目的、目標、あるべき姿、方向性、スケジュールを適正に設定し、誰が、何を、いつまでに、どの様に、どのくらい実践していくのかが必要不可欠です。また、マーケットに変化があれば、お客様の出した答えが本来の姿なので、それを真摯に受け止め、柔軟に対応し修正できうる行動が求められています。
常に儲かるか否かの軸を持ち、投資に対する効果計測を併行しながら、お客様の潜在需要を掘り起こし、「お客様に提案を」という軸でリードできるサイト構築が、本来の百貨店EC事業の在り方ではないでしょうか?

売場(リアルも画面も紙面も)以外にはヒントとマネーが落ちていないのですから、常に現場でお客様目線にて、ヒントを見つけるプロの技の知力(気付き)と、それを拾う体力(実行力)を身につける事が、百貨店を維持向上させていく重要なファクターなのです。
マーケットはブルーオーシャンなのですから、マーケティング力とマーチャンダイジング力、それをお客様にお伝えするプロモーション力、そしてマネージメント力のバランスの良い構築が必要です。

2017.1.30
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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