株式会社オチマーケティングオフィス 


<119>GMS衣料品事業改革は可能か?-2


現在のGMSは衣料事業不振に陥り、混迷しています。大手2社を始め、他社も相変わらず苦戦続きです。大手2社は各店発注と販売員付接客という言葉を見出し、いままでからのチェーンオペレーションからの脱却を図るべく模索していますが、高コストによる方向性は本当に妥当なのでしょうか?
方向性は地域密着のローカライズとGMSの特徴のあるカスタマイズの徹底が生き延びるポイントであるのは明白なのですが、現在の方向性で改善・改革が可能なのでしょうか?
方向性や目標が正しくても、それに向かう方法、手段に適した道筋を選択できないと難しい環境にあるのではないでしょうか?

つまり、いままでのトップダウンの施策から、現場に権限委譲し、現場自ら決定し、改善できうる体質に変換するには時間が掛るものと推測します。
いままで上を見て指図待ちの状態だった現場が急に自分で考えろと言われても即できないように、各店発注のフォーメーションはトップが細かく指示できるものではありません。
現場に精通し、全体最適と部分最適を細部まで十分把握し、経験した人材が、どのような組織を構築すればオペレーション機能を果たし、人材育成も兼ねた権限移譲を踏まえ、効果を生み出せるのです。果たして組織構築と運営に長けた人材がいるのでしょうか?

各店発注の前提は本部によるメニュー提示から始まるのです。本部が今後のファッション傾向等を予測し、企業の方向性の枠を決め、そのメニュー提示を行い、各店はその中で自店に必要なカテゴリーや商品、ブランド等を選択すべきなのです。勿論、AとA’なら全店でAを売るような集約と、CとZなら両方必要と判断し、仕入れる事等の集約と適正な幅出しも重要であり、「結果論金太郎飴」のバイイングが必要なのです。

それを本部が全容をコントロールし、全店共通項を見出し、それがセントラルバイイングになるべきなのです。当然本部で幅決めや奥行きや発注まで実施すべきで、店に任せると仕入コストの非効率に繋がります。
また、地域別事業会社を設定することは現場運営に適して管理しやすいものと考えますが、商品MDの統一が前提なら齟齬をきたします。理由は店舗毎にお客様が異なり、商材の共有化が必要ではないからなのです。物流等のオぺレーション統一のみなら必要ですが、、

別途、販売員付と言った高コスト体制への変化は現在の営業利益の足を引っ張る施策であり、現在の売場でベストを尽くす事ができていない事に気が付くべきです。接客の前に入り易く、見易い売場構築がなされていないのに、お客様が売場に入ってきてくれないので、接客以前にやるべき事は満載なのです。GMSは業態改革が必要と言われていますが、果たして本当なのでしょうか?まだまだ業務改善でほころびを修正することで十分改革・改善は可能です。

売場の方が精一杯やっていたのなら、売上はここまで下がりません。同じ商品を全店展開していても、前年実績を上回る店お前年割れの店が存在していたのです。前年割れの店の方は今まで何をしていたのでしょうか?間違っている環境や施策の中で黙って指示された仕事に邁進し、結果がでなくても自己責任ではないと甘んじていたのではないでしょうか?
組織の中で自店顧客マーケッティングを徹底実行し、間違っている事を糾し、提案を上に向かって発信していかないと改革・改善など程遠いのではないでしょうか?

これからは自ら考えて行動できる人材育成のためにも、現場への権限移譲が重要なファクターになってくるのです。企業経営の基本はすべての社員がお客様のために自らの考えを持ち、提案し、決定したら違う意見の持ち主の案でもベストを尽くして事に当たる人材を育成することが必要不可欠です。

GMSには、下記の手法を徹底実行できうる組織構築とそれに向けた権限移譲が必要です。
1.自店に来店されるお客様のニーズ把握(マーケティング)
2.自店に来店されるお客様のニーズに適した商品供給(マーチャンダイジング)
3.自店に来店されるお客様へのプロモーション
4.売上に対する必要量の洞察力(妥当な仕入数の判断・在庫管理=MD)
5.売場構築力(1客単価向上のための売場構築と什器と商品レイアウトとVMD)
6.それの全体を管理するマネージメント

売場以外にはヒントとマネーが落ちていないのですから、常に現場でヒントや気付きを見つける知力と、それを拾う体力を身につける事が企業を維持向上させていく重要なファクターなのです。マーケットはブルーオーシャンなのですから、マーケティング力とマーチャンダイジング力、それをお客様にお伝えするプロモーション力、そしてマネージメント力のバランスの良い構築が必要です。

2016.05.30
株式会社 オチマーケティングオフィス  生地 雅之


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